「短編集」っていいよね~(親しげに)。
娯楽について「コスパ」って概念は用いたくないタイプなんですが、
こう、短い時間で読めるのに、得られる満足度が高いっつーか。
漫画に限らず、小説の短編集も大好きです。

ということで、なんとなく自宅にある短編集の感想を書いてみようと思いました。
(自宅にないけど実家にあるやつとかも含みます)
あんま長文にしないように、ガサーッと箇条書きで書いていきます。
それではどうぞ。
親父と兄貴が大好きだったこともあり、ガキの頃から家に
諸星大二郎のマンガがあった。幸運だったと思う。
俺の自宅に今あるのは特選集その1の「男たちの風景」。
初期の傑作がモリモリ収録されている。
描き下ろし作品以外は全部俺が生まれる前の作品で、
「俺が生まれる前にこんなマンガ描かれてたんだな~」と愕然とするレベル。
レジェンド漫画家の方々はみんなネジが外れてやがる。
どれもこれも傑作ではあるけど、個人的には分かりやすいオチがついてる
「男たちの風景」や「商社の赤い花」よりも、ラストシーンではっとさせられて
しばらく次の話が読めなくなるようなキレキレの話のほうが好き。
「感情のある風景」の今見ても全く色褪せないSF的アイデアも素晴らしいけど、
個人的にはやはり「アダムの肋骨」が明らかに最高だな~。
初めて読み終わったとき「完璧」って言葉が頭に浮かんだほど。
「あっ、コレ完璧だわ」って。骨組みから肉付けまでムダが一切ない。最高。
74ページなので短編というかもう中編って感じではあるが、
以前書いた「私を構成する5つのマンガ」にも含めた一冊。
そっちにも感想を書いているので、ここではあまり細かく書きません。
ブラックユーモアというものを学ばさせていただいた思い出深い作品群。
「トラウマになった」という言い方も出来るけど、なんつーか
「子供にトラウマを植え付けるのが物語の役割ではないか」という気持ちがある。
「ねじ式」は今更もう語ることもないって感じであるが、
ちゃんとこういう作品を評価できる親の元に生まれガキの頃から
こういうマンガを読める環境にあったのは有り難いことであった。
このカラー作品集は、比較的コミカルな作品が多いうえに、
ラストシーンで愕然とするようなシュールさも薄く、
あんまり暗い気持ちにならずに軽く読める。
まあ「チーコ」みたいに「ウッ」となる作品もあるけど、
総合的にバランスが良くてつげ作品初心者向けと言っていいかも知れない。
この作品集内の話ではなくなっちゃうけど、つげ作品では「別離」が最高に好きだ。
(厳密には違うかも知れないが)ダウナー系エッセイ漫画の完成形という気がする。

……この記事を書いてる途中の2020年6月1日に、ジョージ秋山先生が77歳で
永眠されたという報道が出てきました。ご冥福をお祈り致します……。
と、いうことで。
つらつらとまとまりなく書いてしまいましたが、とにかく俺が言いたいことは
「短編ってホントにいいですよね」ということです。そんだけ。
他にも山のように短編集の傑作はありますが、とりあえず今回はこのへんで。
さよなら、さよなら、さよなら。
娯楽について「コスパ」って概念は用いたくないタイプなんですが、
こう、短い時間で読めるのに、得られる満足度が高いっつーか。
漫画に限らず、小説の短編集も大好きです。

ということで、なんとなく自宅にある短編集の感想を書いてみようと思いました。
(自宅にないけど実家にあるやつとかも含みます)
あんま長文にしないように、ガサーッと箇条書きで書いていきます。
それではどうぞ。
2016年ころに買った九井諒子先生の「ひきだしにテラリウム」。
端的に言えばSF短編……というか掌編集。
色とりどりの作品群は2~11ページ程度なのでスルスル
わんこそば感覚で読み切ることが出来る。わんこそば食べたことないけど。
「オチの大どんでん返しで膝を打たせる」的な
そういう濃い味付けではなく、ワンアイデア・ディティールを
自然な筆致で膨らませて優しい後味を残す繊細なつくり。
この「ワンアイデア・ディティールを膨らませる」という作風、
一瞬「俺にも出来ないかしら」とか思ってやろうとしたけど、
全然ムリでした。身の程知らずにもほどがあったぜ。
知っての通り九井先生は絵が超美しいので、正直もう
眺めてるだけで満足度が爆裂に高いよな。
「代理裁判」「ノベルダイブ」「春陽」あたりが好き。
あと「えぐちみ代このスットコ訪問記」の視点は唸らされたなー。
「えぐちみ代こ」のエッセイ漫画が異様なリアリティでグッとくるぜ。
親父と兄貴が大好きだったこともあり、ガキの頃から家に
諸星大二郎のマンガがあった。幸運だったと思う。
俺の自宅に今あるのは特選集その1の「男たちの風景」。
初期の傑作がモリモリ収録されている。
描き下ろし作品以外は全部俺が生まれる前の作品で、
「俺が生まれる前にこんなマンガ描かれてたんだな~」と愕然とするレベル。
レジェンド漫画家の方々はみんなネジが外れてやがる。
どれもこれも傑作ではあるけど、個人的には分かりやすいオチがついてる
「男たちの風景」や「商社の赤い花」よりも、ラストシーンではっとさせられて
しばらく次の話が読めなくなるようなキレキレの話のほうが好き。
「感情のある風景」の今見ても全く色褪せないSF的アイデアも素晴らしいけど、
個人的にはやはり「アダムの肋骨」が明らかに最高だな~。
初めて読み終わったとき「完璧」って言葉が頭に浮かんだほど。
「あっ、コレ完璧だわ」って。骨組みから肉付けまでムダが一切ない。最高。
2018年ころに買った「水上悟志短編集 放浪世界」。
最初の一篇である「竹屋敷姉妹、みやぶられる」だいすき。
「モブ顔メガネ双子」の可愛さがすごい。
淡い起承転結なんだけど、ちゃんと全部あって短編の見本だなーと思う。
24ページで綺麗にまとまってるのが美しい。
あと表題作(ではないんだけど)と言える「虚無をゆく」も素晴らしい。
74ページなので短編というかもう中編って感じではあるが、
数ページに一回急展開が入ってひっくり返りつつもグイグイ引っ張られ
途中で飽きやダレることがまったくなく最後まで読めて、
最終的に全部の伏線を綺麗に回収して切ない余韻と共に終わる傑作。
こないだ読み返したらラストシーンで涙ぐんでしまった。
よく出来たSF短編だよホントに。
水上先生のマンガ、長編はちゃんと読めてないので
「惑星のさみだれ」とか「プラネット・ウィズ」あたり
しっかり腰を据えて読まないとなー。
30ページ前後でキッチリ後味の悪いオチをつけた短編が大量に読めるので、
非常にダーク方向の満足度が高い短編集。
手塚治虫作品はポップな作品でもどこか暗い風情があるので、
ダークな作風になると本当に救いが無くて良い。
「バンパイヤ」や「アラバスター」とかも大好きです。
なんら救いのない「生けにえ」とか、ある種の悲喜劇として笑える「巴の面」、
被爆症がストレートに出てくる「オクチンの奇怪な体験」あたりも好きだけど、
ガキの頃読んだときは「墜落機」と「双頭の蛇」が強く印象に残ったな。
どの作品も、お理に落ちる「オチ」が付く傾向があり、神様の職人気質を感じる。
そのため「シュールさ」みたいなものはあんまり感じないかなー。時代性だろうか。
1969年とかのマンガだもんな。
30ページ前後でキッチリ後味の悪いオチをつけた短編が大量に読めるので、
非常にダーク方向の満足度が高い短編集。
手塚治虫作品はポップな作品でもどこか暗い風情があるので、
ダークな作風になると本当に救いが無くて良い。
「バンパイヤ」や「アラバスター」とかも大好きです。
なんら救いのない「生けにえ」とか、ある種の悲喜劇として笑える「巴の面」、
被爆症がストレートに出てくる「オクチンの奇怪な体験」あたりも好きだけど、
ガキの頃読んだときは「墜落機」と「双頭の蛇」が強く印象に残ったな。
どの作品も、お理に落ちる「オチ」が付く傾向があり、神様の職人気質を感じる。
そのため「シュールさ」みたいなものはあんまり感じないかなー。時代性だろうか。
1969年とかのマンガだもんな。
2013年に発売された阿部共実先生の短編集。
「空が灰色だから」より前くらいの初期作品がメインで掲載されている。
チャンピオン掲載作品でなく、ホームページに掲載していた作品を
あえて表題作に持ってくるセンスすげえなと思う。
このタイトルがヒキになるという経済的判断もあっただろうけど。
今やもうあちこちで語られ過ぎていて、今更何も言うことないけど
やっぱりこの表題作の切れ味すごすぎる。
ポップな日常系ギャグ漫画みたいに見えなくもない画風と作風のまま
生々しい感情を切り出して、読者の羞恥・嫌悪や後ろめたさを
「共振」させるように揺さぶってくる。とんでもねえな。
支離滅裂な言葉の並びで大まかに何があったか悟らせるわけだけど、
それが「ワザとらしくない」のがまた絶妙。
個人的には「ちーちゃんはちょっと足りない」がベストだけど、
アレは短編じゃないのでここでは語りません。
個人的には「ちーちゃんはちょっと足りない」がベストだけど、
アレは短編じゃないのでここでは語りません。
以前書いた「私を構成する5つのマンガ」にも含めた一冊。
そっちにも感想を書いているので、ここではあまり細かく書きません。
ブラックユーモアというものを学ばさせていただいた思い出深い作品群。
「トラウマになった」という言い方も出来るけど、なんつーか
「子供にトラウマを植え付けるのが物語の役割ではないか」という気持ちがある。
「ねじ式」は今更もう語ることもないって感じであるが、
ちゃんとこういう作品を評価できる親の元に生まれガキの頃から
こういうマンガを読める環境にあったのは有り難いことであった。
このカラー作品集は、比較的コミカルな作品が多いうえに、
ラストシーンで愕然とするようなシュールさも薄く、
あんまり暗い気持ちにならずに軽く読める。
まあ「チーコ」みたいに「ウッ」となる作品もあるけど、
総合的にバランスが良くてつげ作品初心者向けと言っていいかも知れない。
この作品集内の話ではなくなっちゃうけど、つげ作品では「別離」が最高に好きだ。
(厳密には違うかも知れないが)ダウナー系エッセイ漫画の完成形という気がする。
2016年3月頃、なんとなく買って読んだ高野雀さんの「さよならガールフレンド」。
桜色の表紙が綺麗でよいね。
桜色の表紙が綺麗でよいね。
表題作が本当に秀逸。
冒頭10ページだけで「田舎の閉塞感」がギッチギチに伝わってきてしびれる。
「のんびりに見えるのはあんたが休みだからだろ」というセリフが小気味いい。
ソリッドな画風とドライな感情の切り取り方が噛み合ってる。
「ガールフレンド」って言葉、懐かしさと切なさがあって好きだ。
「ガールフレンド」って言葉、懐かしさと切なさがあって好きだ。
一冊通して読むと、決してバッドエンドな話が多いわけではないのに
非常にザラッとした読後感がある。登場人物にバカ男が多いせいだと思う。
男として「ああ、俺もこういうところがあるな」と気持ちが暗くなる。
あと女性目線の「セックスに対しての冷めた感覚」って、いろんな作品で見たけど
やっぱゾクッとするものがある。男ではどうしても持てない目線のような気がする。
「浮浪雲」でお馴染みジョージ秋山先生の「捨てがたき選集」の中の一冊である
短編集「ドストエフスキーの犬」。
「人間の醜さから目を背けない」どころか「人間の醜さしか書いてない」という
レベルの、ものっすげえロックな短編集。
高尚なモンなぞクソ喰らえと言わんばかりに、卑近で下劣な欲望と
人間が当たり前のように備える卑劣さがあからさまに描かれてて震える。
細かい感想は昔マンガにしてたので、それを掲載しておきます。
細かい感想は昔マンガにしてたので、それを掲載しておきます。

……この記事を書いてる途中の2020年6月1日に、ジョージ秋山先生が77歳で
永眠されたという報道が出てきました。ご冥福をお祈り致します……。
と、いうことで。
つらつらとまとまりなく書いてしまいましたが、とにかく俺が言いたいことは
「短編ってホントにいいですよね」ということです。そんだけ。
他にも山のように短編集の傑作はありますが、とりあえず今回はこのへんで。
さよなら、さよなら、さよなら。