永井義男の小説『幕末一撃必殺隊』を原作とした時代劇マンガ、
松本次郎先生の「いちげき」、新刊が出ました。
緊急事態宣言が解除されて、ようやく本屋が開き始めたので、
買ってまいりました本日は2020年5月31日。
感想を書いていきます。
ちなみに、原作小説は未読でございます。まず前提として、読む前に「このくらい面白いだろう」と予想してた
五倍くらい面白くてテンションが上がりまくってしまいました。
主要キャラがバタバタ死ぬ展開ってやっぱテンション上がっちゃうし、
一撃隊でなく侍勢の戦いはやっぱ読んでて興奮するぜ。
島田様はある意味ギャグめかした死に方になってしまったが、
相楽総三が見た目通りのスネ夫ではないところを見せててグッときた。
相楽は史実人物なので死なないことは確定しているが、この後出番あるのかな。
「サムライの肉はうめえだぞ」は悍まし過ぎてゾッとさせられたなー。
この手の人肉食描写、厄介なタイプのクレームが来るらしいから
メジャー青年誌とかだと怖くてもう描けないらしいやね。
「金杉橋の戦い」は、味方サイドによる民間人への殺戮、
四肢や頭部の無造作な欠損、血と臓物に加え糞小便に塗れた地獄、
精神の均衡を崩し人間性そのものがひび割れる有様と、
総じて「戦争映画」を思わせる凄惨極まりないエピソードだったなー。
松本先生の筆致がユーモラスで、読んでて気持ちが落ちすぎないのが救い。
新徴組が出てくるの、幕末モノって感じがしていいですな。
なんでリーダー女性なんだろ? と思ったけど、中沢琴かな?
利八や下働きの与吉のことは正直忘れかけてたが、
一巻読むと透破の気配に島田様が気づいてるシーンがあったりして
おお伏線だったんだなと思ってグッときました。
「他人の作った約束事に従い」「他人の作った趣向を愛で」
「他人の作った権威に平伏するのだ」という切り捨て方は、
現代でもまるで変わらない普遍的なテーマで良いな~と思う。
乱破のあの口寄せで動物に話させる描写、テンション上がっちゃうよね~。
島田様の最後の戦いは、論理的な戦術と緊張感が相まって最高だった。
単純にバトルアクションとして描写がカッコ良すぎる。濡れる。
最早、刀の時代でないと知りつつ、こうするしかなかった
サムライの死に様――とこう書くと割とよくある話なんだけど、
島田様の内面を語らないところがハードボイルドで素敵だ。
俺が本作で一番好きなキャラが島田様なんだよなー。
そして市造のセップク。
侍に虐げられ「身分差なんてなくなっちまえば」と言い続け、
ようやく憧れのサムライになった市造が「新しい時代」なぞ
受け入れられないのは当然のことで切ない。
かくして主要登場人物がほぼ壊滅し、伊牟田とウシだけが残り、
いよいよ次巻で完結とのこと。
いや~終わるべくして終わるタイミングだけど、終わるのか~。
そういや映画化の企画どうなってんだろ。