
待望のナポレオン新刊出たので感想書いていきます~。
よろしくどうぞ。
前巻のヨーロッパ史に残る激戦「ライプツィヒの戦い」に続き、
20巻では連合国軍の侵略「フランス戦役」が描かれる。
戦略的ミスによりダヴーやサン・シール軍を動かせないまま、
プロシア・ロシア・オーストリア・スウェーデン・バイエルンの
連合軍と絶望的な戦いを強いられるナポレオン。

疲労困憊した敗残兵五万人(実際は三万三千)で、十倍の敵から
国を守ろうとしているのである。
そりゃ「私が加われば五万は十五万人になる」とか言われても
部下たちはドン引きだよな……。
友軍やら血縁者に裏切られ、部下は戦意を失い――と加速度的に
状況は悪化していく。

だが、そんな絶望的な状況下、ナポレオンはここにきて
シュヴァルツェンベルクとブリュッヘルの軍勢をガンガン撃破し
戦後のことを考えていた人間たちの度肝を抜く。
本人が率いると勝っちゃうのがこの人のホンットにタチが悪いとこだよなー。
そして、鹿島茂さんの「情念戦争」でも繰り返し触れてたが、
ここでナポレオンが天才の最後の輝きを見せたことが、
戦争の手仕舞いのチャンスを奪っていくことになる。

ナポレオンを見限り実質的なスパイになりつつも、タレーランはあくまで
打算とナポレオンへの恩義から王朝を残そうとするのだが……。
このコマ、いい表情だなー。
ブルボン朝の復古はタレーラン的にも決していい選択肢じゃないのだが
必然的に歴史の流れはそこに向かって進んでいく。

メッテルニヒは、タレーランの意図を読み切り、王たちを誘導する。
タレーランは私利私欲と保身の権化ではあるんだけど、同時にそれらを
公益・国益と合致させられる巨視的な人物でもあって、それでいてどこか
諸々のエピソードを見ると人間味もあって凄く面白いんだよな。
プライドが高くシニカルで表面的には情を見せないところもカッコイイ。

タレーランだけでなく、部下の将軍たちも戦意と忠誠心を失っていく。
猛将ウディノは戦う気力を失い、ヴィクトールはあからさまにサボタージュに入り
マクドナルは戦う意味を見失い、オージュローは公然と無視する。
歴戦の猛者達が、終わりのない戦いに疲れ果て心折れる姿は切ないものがある。
まあランヌだって折れてたわけだし、勝利の栄光や希望があったとしても人間、
無限の戦争に耐えられるものではないよな。まして敗戦の最中では。

そしてマルモンもポカをし始める。
「友人」を片っ端から戦火に送り込み死なせてきたナポレオンが
マルモン救出時に「あいつは俺の最も古い友人だ」と思っているのが、
今後のことを考えると悲しいものがある。

そしてついに、連合軍は「ナポレオンを無視して」パリに向かう。
ここでパリ放棄という戦術を採ることが出来ないナポレオン。
モスクワを平然と焼き払ったアレクサンドルや、ウィーンを奪われても揺るがなかった
ハプスブルクの君主と比して、ナポさんは立ち位置が明らかに違う。
この辺、正統性の怪しい成り上がり者の限界って感じが少しある。
パリを捨てて背後から連合軍を攻撃すればワンチャンあった、みたいなことを
「情念戦争」で書いてたけど、実際どうだったんだろうな。

本筋と関係ないけど、女を孕ませてバックれたルカのこのシーン、
クズすぎて笑ってしまった。
せめて帰って和解とかしたならまだしも、普通にバックれたままかよ。

ビクトルについては「1798年のエジプト遠征でオカマ掘られてから、
1813年まで十五年ずっと最前線で伍長やってる」ということで、
若干ムチャな設定になりつつあるんだけど、狂言回しである以上仕方がねえか。
長谷川先生も自覚のうえで作中ツッコミが入ってるし。
実際ビクトル居なくなったらかなり読みにくくなると思う。

あと名もなきモブ兵士の「20年ぶりに故郷に帰ってきた」話が、
本筋と全く関係ないけど味わい深くていいな~と思いました。
こういうモブキャラのショートエピソードで奥行きを出すの
ホントうまいな~って思うんですよね。
戦争で子供を奪われた母親の「私はただ働いて暮らしたいだけなのに」とか
凄くグッときたもんなあ。
ナポレオンは偉大なる英雄であると同時に、民草からはエジプトの頃から変わらぬ
「歩く災厄」であることが分かる。

あと、戦争の惨禍はこれまでも散々描かれてきているんだけど、
20巻のコサック達の蛮行はエグい表現だったなあ。
中世の戦争ならこのくらいの蛮行はある意味当たり前のことなんだろうが、
時代的に微妙に近世だからか悍ましさが際立つ。
まあ20世紀でも似たようなことは起きてるわけで、普遍的な人間の営みとして
目を背けてはいけないことであるよな。
といったところで20巻は終了。
すごく面白かった反面、歴史上の出来事を駆け足で処理している感があり
ドラマ・演出を差し挟む隙間があんまり無かった印象もちょっとあった。
次巻からはいよいよパリ陥落・マルモン裏切り・ナポ退位と来るので
ドラスティックかつドラマティックなエピソードが見られそうでワクワクしますね。
長谷川先生はあんまり休載しないみたいだから、単行本が安定して
出てくれるのが非常に嬉しいぜ。次巻も楽しみです。

ナポレオンを見限り実質的なスパイになりつつも、タレーランはあくまで
打算とナポレオンへの恩義から王朝を残そうとするのだが……。
このコマ、いい表情だなー。
ブルボン朝の復古はタレーラン的にも決していい選択肢じゃないのだが
必然的に歴史の流れはそこに向かって進んでいく。

メッテルニヒは、タレーランの意図を読み切り、王たちを誘導する。
タレーランは私利私欲と保身の権化ではあるんだけど、同時にそれらを
公益・国益と合致させられる巨視的な人物でもあって、それでいてどこか
諸々のエピソードを見ると人間味もあって凄く面白いんだよな。
プライドが高くシニカルで表面的には情を見せないところもカッコイイ。

タレーランだけでなく、部下の将軍たちも戦意と忠誠心を失っていく。
猛将ウディノは戦う気力を失い、ヴィクトールはあからさまにサボタージュに入り
マクドナルは戦う意味を見失い、オージュローは公然と無視する。
歴戦の猛者達が、終わりのない戦いに疲れ果て心折れる姿は切ないものがある。
まあランヌだって折れてたわけだし、勝利の栄光や希望があったとしても人間、
無限の戦争に耐えられるものではないよな。まして敗戦の最中では。

そしてマルモンもポカをし始める。
「友人」を片っ端から戦火に送り込み死なせてきたナポレオンが
マルモン救出時に「あいつは俺の最も古い友人だ」と思っているのが、
今後のことを考えると悲しいものがある。

そしてついに、連合軍は「ナポレオンを無視して」パリに向かう。
ここでパリ放棄という戦術を採ることが出来ないナポレオン。
モスクワを平然と焼き払ったアレクサンドルや、ウィーンを奪われても揺るがなかった
ハプスブルクの君主と比して、ナポさんは立ち位置が明らかに違う。
この辺、正統性の怪しい成り上がり者の限界って感じが少しある。
パリを捨てて背後から連合軍を攻撃すればワンチャンあった、みたいなことを
「情念戦争」で書いてたけど、実際どうだったんだろうな。

本筋と関係ないけど、女を孕ませてバックれたルカのこのシーン、
クズすぎて笑ってしまった。
せめて帰って和解とかしたならまだしも、普通にバックれたままかよ。

ビクトルについては「1798年のエジプト遠征でオカマ掘られてから、
1813年まで十五年ずっと最前線で伍長やってる」ということで、
若干ムチャな設定になりつつあるんだけど、狂言回しである以上仕方がねえか。
長谷川先生も自覚のうえで作中ツッコミが入ってるし。
実際ビクトル居なくなったらかなり読みにくくなると思う。

あと名もなきモブ兵士の「20年ぶりに故郷に帰ってきた」話が、
本筋と全く関係ないけど味わい深くていいな~と思いました。
こういうモブキャラのショートエピソードで奥行きを出すの
ホントうまいな~って思うんですよね。
戦争で子供を奪われた母親の「私はただ働いて暮らしたいだけなのに」とか
凄くグッときたもんなあ。
ナポレオンは偉大なる英雄であると同時に、民草からはエジプトの頃から変わらぬ
「歩く災厄」であることが分かる。

あと、戦争の惨禍はこれまでも散々描かれてきているんだけど、
20巻のコサック達の蛮行はエグい表現だったなあ。
中世の戦争ならこのくらいの蛮行はある意味当たり前のことなんだろうが、
時代的に微妙に近世だからか悍ましさが際立つ。
まあ20世紀でも似たようなことは起きてるわけで、普遍的な人間の営みとして
目を背けてはいけないことであるよな。
といったところで20巻は終了。
すごく面白かった反面、歴史上の出来事を駆け足で処理している感があり
ドラマ・演出を差し挟む隙間があんまり無かった印象もちょっとあった。
次巻からはいよいよパリ陥落・マルモン裏切り・ナポ退位と来るので
ドラスティックかつドラマティックなエピソードが見られそうでワクワクしますね。
長谷川先生はあんまり休載しないみたいだから、単行本が安定して
出てくれるのが非常に嬉しいぜ。次巻も楽しみです。