
以前、「一日外出録ハンチョウ」の記事でも触れましたが、基本的に
「作者が別のスピンオフ」が苦手です。好きな作品であるほど読みにくい。
スピンオフを読むことで、大好きな原作に雑味がフィードバックされる
感覚があるというか……まあ個人的・生理的な理由です。
「無限の住人」は生涯ベスト級に大好きな作品なので、なおのこと
読みにくい……んですが、今回なんとなく気が向いて読むことにしました。
幕末ってことは本編終了後(最終話の時系列よりは前)の物語だろうし、
あんまり影響なかんべ。
ということで、感想を書いていきます。
よろしくどうぞ。

まず読み始めて最初に思ったのは「絵がうめえ!」 ということ。
陶延リュウさんの四季賞受賞作も読んでみたんだけど、元々の画風や作風は
そんなに似てないので、明らかに無限の住人に寄せて描いている。
簡単に言うけど、沙村先生の画風に「寄せる」って相当な力がないと
無理なんじゃねえのかな……? 絵描けないからわかんねえけど。
異常なセンスと画力に支えられたとんでもねえ構図のアクション描写とか
そういう「沙村節」的なものは無いけど、それは本人以外に望むべきものではない。

冒頭、アメリカから話が始まる展開も好みだな~。
英語ペラペラになってる万次さんにテンションが上がるぜ。
るろうに剣心の左之助もそうだけど、海外行って脳筋キャラが
視野広がって帰ってくる感じいいよなあ。
(いやまあ、万次さん脳筋ってほどでもねえか)
荒篠さんのワスボールドなど、逸刀流や六鬼団の武器を使って戦ってくれるのも
当然といえば当然だけどやっぱいいね。
ていうか、よく考えるとメイン武器が銃の国だと万次さん無敵だろうな……。
基本的に銃弾の貫通ダメで殺しようがない人だし。

あと「烏」をついに使いこなせるようになってるのも嬉しいな……。
万次さん強くなってんだな。「黒衣鯖人の体質」という説明付も好ましい。
まあ、だとしても人体両断は無理な気がするが……。
ともあれ、滝川廉治さんの物語作り、原作へのリスペクトが感じられて良いね。
そして、安定した「巻き込まれ型主人公」である万次さんに、幕末の著名人が
関わってくるわけで、これはもう面白くなる要素がてんこ盛りである。
ビンビンにキャラ立っていて、かつ知名度バツグンの連中が山程いる幕末に、
万次さんが投げ込まれたらどうなるか……という「無限」最終話読んだときに
抱いたワクワク感をちゃんと実現させてくれている。

基本的に万次さんは「なんらかの強いモチベを持った誰かのパートナー」
としてじゃないと、なかなか話を動かしてくれない人なので、
坂本龍馬と絡むのは「なるほど!」という感じがある。
万次さんが幕末に「逸刀流」という言葉を口にしているシーンを見ると、
明治で「90年ぶりに口にしたぜ」とか言ってなかった? とは思ってしまうが、
まああの人自分が口にしたことすら忘れてそうだしな……。
新選組のことも忘れてる感じあったし。
綾目歩蘭人の係累らしき人物が出てきたのは素直にビックリした。
万次さん以外の原作キャラは出ようがないと思ってたので……。
しかしアイツの孫が不死を追うとなると中々の因果だな……。

鼻はそっくりだけど割と可愛い。
あと赤らめた顔が沙村先生っぽい作画ですげえなと。
この一巻読んで、自分でも驚くほどほっこりしたんだけど、それは多分、
万次さんが普通に「強者」として描かれていたのが嬉しかったせいだと思う。
あの、原作の「無限の住人」だと明らかに万次さん、強くはないじゃないですか。
回復力でゴリ押しするゾンビ戦法が持ち味だけど、ランク付したら多分「B+」くらい。
刃物で戦うバトル漫画で、不死身の肉体を持ってるのに中堅レベルなんだよな。
そういう意味で、今回幕末だとそれなりに不死身の肉体抜きにした
戦闘力を評価されてる印象があって、思わずニッコリしてしまいました。
ということで満足しました。面白かったです。食わず嫌いは良くないね。
一巻の表紙で万次さん、剣と銃を構えてるんだけど、まさか銃を撃つ
万次さんがこの先見られるんだろうか? それは見てみたい気がするな……。