まったく知らない作者さんの、全く知らない作品だったんですが
amazonのKindleストアをフラフラしてるときにたまたま見つけて、
「歴史(史実)もの」+「ハルタへの信頼感」という要素だけでジャケ買いしました。
果たして俺がハマれる作風なのか。読んで感想書いてみようと思います。
タイトル通り、主人公はドラキュラの語源にもなったという、串刺し公ヴラド三世。
まず彼の「傀儡としての君主」という立場が細かく描かれる。
細密な作画で気持ちがいいですね。
この手の作品って「いかに序盤で知らない人に周辺状況を伝えるか」というところが
一つのポイントなんじゃないかと個人的には思うんですが、
本作では数ページでナレーションを上手く使うことで非常に端的にまとまってて
私の中で「アラ、いいですね」がこみ上げてきました。
「ニつの大国に挟まれた要衝地点の君主で、しかも貴族たちの傀儡に過ぎない」
という主人公の置かれた(なかなかに逼迫した)状況が速攻で頭に入ってくる。
背景が主張し過ぎない感じに詰められてるのも、実に渋いな。
物静かなヴラドのキャラクターと相俟って、独特の画面上の緊張感を
下支えしているような感じがする。
政治システムの説明も、邪魔にならない程度に入ってきて嬉しいところ。
歴史ものって、この手のうんちくをどこまで入れるか非常に難儀なバランスだと想像する。
多すぎるとジャマになったり、本質を見失わせたりするだろうし。
個人的には最近クルセイダーキングスⅢにハマってることもあって、グッときましたね……。
ああ……流言……好き……。
陰謀でのし上がっていくの好きですわァ……(半笑い)。
周囲が敵だらけの状況から、腹心を得ていくのもいいですよね。
既得権益を吸い上げ国を衰えさせる不遜な貴族達に、少しずつ搦手で立ち向かっていく。
この辺、ストラテジー的な娯楽性があって非常にわかりやすく面白い。
銀英伝の序盤とかもそうだけど、この「成り上がり」の高揚感はたまらんよな。
とはいえ、銀英伝の門閥貴族ほどバカばかりではなく、ちゃんと警戒されて
先手を打ってもこられる。
緊張感が継続して非常に良いと思います。
これまでずーっと表情が無かったヴラドが、初めて笑うシーンが
すごい効果的で痺れましたね……。
そして遂に、恐怖による統制・統治を開始するヴラド。
「これからヤベーぞ」感もあるが、同時に高揚感が高まる。
現代の日本であってすら、暴力と恐怖ゼロで国家統治は出来てないので
普遍的な事実ではあると思うし、それを行使するところは確実にエンタメだよな~。
ということで、非常に分かりやすく面白い正統派歴史もので
最後までスルスルと読んでしまいましたね。
コマ割りや演出も含め、奇をてらわない丁寧なマンガって感じがする。
飛び道具的なことを全然してないのに面白い。
一巻時点でヴラドのキャラクターは割とマジで物静かで知的以外
なんにも分かんないってレベルなんだけど、ちゃんと魅力的に描かれててすげえや。
正直、史実ヴラドのことはなんにも知らないので、こっからどうなっていくのか
想像もできないが、何しろ「串刺し公」なのでヤベーことになるのは間違いなかろう。
非常に楽しみである。
つーかやっぱハルタのマンガ、全体的に質が高い気がするな。
続きも読んでみようと思います。ご清聴ありがとうございました。