8
久しぶりに映画の感想を書きます。
あと一週間でアマゾンプライム枠から外れると知って慌てて観ました「孤狼の血」。

箇条書き的に感想を書いてみます。
よろしくどうぞ。よしなに。

本作は2018年公開、白石和彌監督の警察サスペンス映画。

原作は柚月裕子さんの小説とのことですが、割と改変要素が多く
原作ファンからは結構賛否が割れてるみたいです。俺は未読。

また、白石監督作品も初見です。
……と思ってググったら「凶悪」観てたわそういえば。

「凶悪」の個人的感想としては、好きなシークエンスも多いけど、
実録犯罪ものにしても、さすがに地味過ぎた印象がある。
あの手の作品なら「冷たい熱帯魚」とかのほうが好きかなー。
まあ冷たい熱帯魚もアレはアレで過剰すぎるんだけども……。

舞台は暴対法成立前の昭和63年、広島の暴力団同士の抗争と
その間で立ち回る悪徳刑事・生真面目インテリ刑事のコンビが描かれる。

違法上等の暴力刑事と生真面目刑事のバディムービーという
設定自体は割とよく見るもので、普通なら「最初は反発し合うものの
次第に互いを認め合う」というかたちに落ち着いていくんだけど、
「トレーニングデイ」みたいな最終的に決別する逆パターンもあるから油断出来ない。

本作は最終的に比較的分かりやすいところに落ち着いていくんだけど、
もうちょっと大上と日岡が関係を深めるシーンがあってもいいかな~って思った。
このドライな感じが好ましいし、あんまりベタベタしてもアレだけど、
なんだろ、もう……ほんのひとつまみ程度でいいので。

映画冒頭、スーパーエゲつない拷問シーンから入るんだけど、
これは「合わない人はお引取り下さい」的なリードジャブなのかも知れない。

「ブタのクソ食わす」というだけでキッツい話なんだけど、演出的にも
きちんとブタのケツからモリモリ出るショットや、
口にネジこむショットを押さえていて素敵でしたね……。
音だけで表現することはいくらでも出来るのに、あえてこう行く! っていう。

指切りも、カットによってグロくならない描写方法はいくらでもあるのに
わざわざああいう表現にしてて見事だな~と。

役所広司は、画面に出てくるだけで間が持つ「役者力」がすごい。
脂ぎったオヤジの魅力をフルスロットルに出してくる。
短気で粗暴で凶悪なんだけど、松坂桃李と殴り合いになって
普通に負けてダウンするトコが情けなくて良い。

俺個人としてのベスト役所広司はやっぱり「Cure」なんだけど、
これはちょっと思い出補正に近いものがあるかも知れない。
つーかcureから二十年立ってるのに役所広司あんま見た目かわんねえな。

あと序盤のチョイ役なんだけどMEGUMIも独特のセクシーさがあって
良かったですね。胸の谷間に汗をかいてる描写と口紅直すトコが絶妙。
というか本作の女性陣みんなエロくて魅力的だったな……。

日岡を演じる松坂桃李も「青臭いキャラクター」を十二分に説得力持って
演じていて素晴らしかったなー。
この手のキャラ、観客目線だと観ていてイライラするのは当然なんだけど
日岡自身が暴力を振るうシーンが結構あるのでカタルシスがあっていい。

大上に殴られそうになって思わずパンパンと捌きながらカウンター入れるシーン、
スピード感があって凄く気持ちが良かったね……。
また、ラスト付近の無表情でブチギレボコるとこも陰惨極まりないながらも、
観客が安心して「暴力を楽しむ」ことが出来る仕上がりで大いに結構。

パチンコ屋のシーンも、日岡単体でボッコボコにされつつも反撃出来ず、
そこから罪状と懲役読まされるのインパクトあって良かったな。
悪徳刑事にやらされるファーストミッションとして100点である。

警察陣は田口トモロヲや滝藤賢一が味という味を出しまくってきており、
濃密なオジサン成分をたっぷり堪能できる。

ヤクザ側として、江口洋介は「演技上手い」という感じでは正直ないんだけど
こう……存在感だけで映画の質を高めるようなところがあって実に渋い。
割とカッコいい立ち回りを見せるんだけど、最後の最後みっともない姿を晒す。
本作は基本、ヤクザも警察も美化してないのが好ましいところだと思う。
みんな打算と保身で動いている。

石橋蓮司は、アウトレイジでもほぼ同じようなポジションやってるの観たので
既視感あるかな~って思ったんだけど、あっちと違って今回はもっと
老獪な立ち回りも見せてくる。死に方はあっちよりむしろ無残極まりなくて、
最後見せないのかな~と思った首を「ドン!」と見せてくるの悪趣味で良かったな。
あのビックリドッキリ……の口癖も下劣極まりなくて「らしい」感じでいい。

竹野内豊はなんか「えっ、出てたの?」って思いましたね……。
アレ竹野内豊なんか……。いや、そう思わせるというのは演技成功してるってことだ。
シン・ゴジラのときも思ったけど、色んな新境地開拓してんなあ。

真木よう子もおっそろしい美しさで、体ベッタベタ触られまくる。
でも「極道の妻」的な役作りは見事にハマってたなあ。
考えてみるとメッチャクチャ不遇というか、悲惨な人生を感じさせるが
どうあれ愛する子供がいるだけマシなんだろうか。

ピエール瀧は「強面だけど実はちょっと気弱」な感じが、またしても
「アウトレイジ最終章」のほうのイメージと多少重複してた気がする。
まあこっちは最後までちゃんと報われてるからいいよな~。おいしい立ち位置。

本作のヒロイン的ポジションである桃子役の阿部純子さんも、
メッチャコケティッシュな可愛さを発揮してて最高だった。
ほとんど終始ナマアシ丸出しなんだけど、スタイルの良さがものすごい。
ファッションモデルパワーが炸裂している。

桃子のあのオチは「なんじゃそりゃ!」ってなってる人もいたみたいだけど、
個人的にはああいうオチじゃないとこの娘出す意味ないよね、って話なんで
ツイストとして大正解だと思いました。

二又一成さんのナレーションがちょっとだけ浮いてる感じというか、
正直ナレーションが入るたびに「現実に引き戻される感」を味わった。
ヤクザ映画として定番の要素ではあるんだろうけど、個人的には
あんまり必要なかったような気がしなくもない。
まあでもナレーション無しで状況説明出来るかと言われると難しいところだ。

中村獅童、もうなんというか「中村獅童丸出し」って感じで出てきて笑ったなー。
胡散臭さが最高だった。
あと、序盤に出てきたヘルス嬢エッロいな~って思ってたんだけど
良く調べたら範田紗々でビックリした。そりゃエロいわな。

作中何度もエグい死体が出てくるんだけど、大上の水死体のリアルさは
特筆モノ
だったと思う。ただのインパクト重視の演出じゃなくて、
さんざん傍若無人に暴れまわってた大上の物言わぬグロい死体を
日岡と一緒に見ることが重要なポイントなんだと思う。

ここで変にボカした演出だったり、大上の死体が小綺麗な感じだったら
安っぽい「刑事ドラマの泣ける殉職シーン」でしかないので。

あと、全体的に映像内の「昭和のディティール」が細かくてグッときた。
youtubeとかで動画でも見るけど、現代の感覚で「昭和」を見ると
ちょっとした異世界感すらあって気持ちがいいのよね。
昭和ディティールへの拘りは凄くて、自販機や車、人々の髪型と服装、
放火のときに破られてた雑誌、どれも素晴らしかったな……。

あと「パソコンが一台もないオフィス」を見ると、昔の会社って
こんな風だったんだなあって思いが湧く。
正直、パソコン無しでどうやって仕事してたんだろう? って思う。

ポケベルが出てきたのはビックリしてしまった。
昭和末期ってポケベルあったんだっけか。

映画全体としてグダる感覚を覚える前に場面が切り替わりテンポがよく、
最初から最後まで夢中になって見れるいい映画でした。
ラストシークエンスの「スパッ」とした終わり方も好み。続編も楽しみだのう。