1
シンプルで美しい表紙だなー!
タイトルデザイン含めて、超かっけえ装丁だ。

ということで「累」の松浦だるま先生の最新作、読んだので感想を書いていきます。
松浦先生は未だに「めしにしましょう」の广先生のイメージがあるので、
液状化しながら漫画描いている印象がある。どんな印象だよ。

よろしくどうぞ。
2
「掴めぬ夢を 永遠に追うことになろうとは」という冒頭のモロノーグ、
特に目新しいものではないのだろうけど、なんか胸に刺さるものがあった。

掴めぬ夢を追う人生の苦しさや不毛さが分かるようになったからかも知れない。
3
細密な背景で、いきなり世界観に引きずりこまれるなー……。

背景が世界を「確定」させるということを感じさせるというか。
ゴメン、何言ってるか自分でも良くわからないけど。

時代設定としては、作中で細かく語られてはいないが
調べた限り「天保」ということで、徳川家斉の時代のようだ。
「無限の住人」とかと同じくらいの時期やね。
4
時代劇漫画での現代語遣いについては、色んなバリエーションがある。

ドラマの時代劇くらいのレベル感にして「それっぽさ」を追求するパターンや、
外来語は使わないけど言い回しは完全に現代語にするパターン、
あるいはもう「新九郎、奔る!」みたいに外来語まで使っちゃうパターン。

どうあれ「当時そのままの会話にしたら読者は全く分からない」というのが
前提条件である以上は、サジ加減ひとつというか個人の好みの話ではある。

本作はまた独特のトーンで、会話は現代語風で、ルビで更に分かりやすくしている。
「月代剃れ」に「フォーマル」のルビはさすがにトリッキーで驚いた。
5
そして「刃に触れられない」というのが、割とSF的な設定で
「そ、そう来たかぁ~~~!」と唸った。

「一話の段階ではどう転ぶか分からない」という作りの作劇で、
これは「前作が売れた作家さんの新作」でないと、なかなか
編集部からGOが出ないやつなのではなかろうか。
(よく知らないのに適当なことを書いています)
6
そして失意の主人公のもとに突然、謎の美女が嫁に来る。

といっても、全て理解のうえで翻弄するような感じの立ち位置ではなく、
彼を理解し救おうと四苦八苦する「ループもの主人公」的な立ち回り。

月さんは容赦なく美しく描かれているが、結構汗かいてるコマが多くて
割とバタバタしてる感じが好ましいな。
「やりすぎた……」って頭抱えるシーンも可愛い。
7
このアホみたいなディフォルメ顔がとてもよい。
8
「普通の人間が普通に出来ることが、自分にはできない」というのは
想像を絶するコンプレックスなので、強めに主人公に感情移入してしまう。
まあ俺の場合は車の運転とかそういうレベルなんだけども。

ただ漫画としては五話くらいまで、視点人物である鋼之助がネガティブな
メンタリティのまま話が進むので、結構ストレス強めかも知れない。
いや、曇りつつも行動はハッキリしてるからそこまででもないか。

読み切りだったら「ここまで(主人公の相克にケリがつくまで)を一話でやれ」
ってなるから大変だよなあ……と全然関係ないことを考えてしまった。
9
初期設定の謎については、一巻段階では匂わせ程度であるが、
「幾年降って」とのセリフもあり、やはり時代を遡ってはいる様子。
10
「黒曜石なら触れられる」というの、なんだろ、こういう
SFの独自ルールの抜け穴を使う感じいいですよね。

鋼之助が触れられないのは「金属」であって、
黒曜石はマグマ由来じゃないからセーフということかな?
11
後半は、月を連れ去ろうとする陰陽師との戦闘に入り、割と
ガッツリ目にアクションバトルが開始されてテンションが上がる。
この刃物をヘシ曲げる体質をアクティブに使用すると映えるなあ。

「刀を持てれば初太刀で奴を殺せた!」という激情の叫びは、
ここまでタメが長かっただけにカタルシスがあって気持ち良かったですね……。

ということで一巻はここまで。
まだ大きなドラマや展開が始まる前段階という感じはあるが、
割とガッツリ目にアクションを魅せる作風になっていきそうな期待感がある。
面白かったです。

2021年9月時点で、まだ三巻までしか出てないみたいだし
ガガガッと一気に読んでみようかしら。