1
前巻に引き続き、ベアゲルターの感想書いて行きます。
二年ぶりの最新巻なので、話を思い出すために最初から読み返しました。

よろしくどうぞ。

1
睫毛とDr.ヒューズの、いうなれば「線引き」の話。

作中では一種の「試験」みたいな会話だったわけだけど、同時に
読者に対しての「キャラクターのモチベーションの説明」でもある。
睫毛も視点人物の一人なのでこういうのは重要な部分だと思う。

Dr.ヒューズは明確に敵側ではあるが、なんともいえない味わいがあって
魅力的なキャラクターであると思う。ちゃんと格闘キャラだし。

しかし「オンナが強いマンガ」という印象がすごくあったけど、
冷静に振り返ると「格闘術がメッチャ強い女」ってそこまで居ないんだよな。
忍とソリは素人、ナミも義手を除くとそこまで強いワケではないし。
アリマは強いんだろうけど、今のところそこまで戦闘力が発揮されてない。
2
貧富の差に尊厳を踏みにじられてきた睫毛に対して、
「野良猫の顔」という端的な表現がエゲつない。
確かに飼い猫と野良猫の顔って、残酷なほど違うんよね……。
とまれ、富める者のロジックほど鼻持ちならないもんはない。

「少数を捨てて多数を救う」と「貧者を捨てて富者を救う」は
別軸の倫理的問題で、どっちにも理はあるし批判の余地もある。
どうあれガンの特効薬作れるならメッチャ偉大な業ではあるが……。

最終的に、ヒルマイナ社は否定されるべき悪であるのは間違いなく
やっぱあの丸メガネジジイの孫とかが絡んでくるんだろうか。
3
オズウィンさんの最後。
トレーネとのシーンは「ドント・ブリーズ」をちょっと思い出した。
実に悍ましく非倫理的で素晴らしい。

登場時のあの感じから、さぞかしクソ野郎ムーブを見せてくれるんだろうなと
イヤな期待感があったが、割とアッサリ退場でホッとした。

彼も悲劇的な事件に否応なく巻き込まれ運命と人格を狂わされた「犠牲者」で、
トレーネもある種の同情を見せていたのが却ってキツい。
そのうえで殺され方がメチャクチャエゲつなくて笑ってしまった。

というか義手の火力高すぎねえ?
航空機のジェット噴射とかの次元じゃねーかアレ。
4
顔だけで「コイツ絶対ロクなヤツじゃねえな!」と分かるドクターと睫毛。
無限の住人でもたまに出てきた「拘束された人間相手にブツブツ語る
異常にサディスティックなクソ野郎」というジャンルだ!

手術用の器具の形状がもう逸刀流が使う武器みたいなノリで最高である。
ロボトミーの悍ましさを存分に振り回してくれて悪趣味で素晴らしい。
こいつも割とアッサリ死ぬところがまた後腐れなくて良い。
5
忍・ソリ・アリマの面白女子トリオの奮闘。
三人とも固有スキルはあれど基本頼りないのがよい。

あと、この辺のスパイものやソーシャルハックめいた地味な駆け引き好き。
意外とアナクロな手法が逆に厄介になってくるの、結構あるあるな気がする。
6
平良元警部が初登場。

普通こういう先が気になる展開のなかでポッと出の新キャラが関わると
停滞感とか出てきちゃうんだけど、全然そんなことないのがすげえ。

「女好きでちょっと抜けているが有能」という美味しすぎるキャラクター性が、
セリフだけでなく顔立ち・表情でしっかり表現されていていきなり面白い。
さらっとやってるけど、モノローグだけでグイグイ読まされるネームもハンパねえ。
7
トレーネに恩義を持つカヤさんが味方に。
正直、味方サイドの戦力不足が著しいのでバランスが取れてきた。

騙し合いが結構ある作中において、素朴な性格プラス
裏切りようのなさそうなバックボーンのキャラクターというのは安心感がある。

叡祐もそうだけど、突然有能な味方キャラが増えても「ポッと出」感が
あんまりないのはキャラ立ての巧みさ・手際の良さなんだろうなー。

というか冷静に考えると、叡祐とか広域暴力団の若頭補佐が
突然女子に心酔して組の意向に反する行動を取ってるワケで相当ムチャなんだよな。
それを「ご都合主義」に見せないように様々な手が打たれているわけだ。
プロは凄い。
8
そしてここにきて、タイトル回収っぽい演出が来ると非常にグッときてしまうな……。
定番ではあるが、やっぱり作中でタイトルに言及されるシーン好きだわ。

ということで、6巻もガンガン話は進むし面白くて最高だったのですが、
次の巻はまた二年後になるのか……。まあ楽しみに待ちます!

複雑なようでいて、物語構造としては結構シンプルな復讐劇なので、
全体としては10巻くらいで完結するのかなあ?
仮にそうだとしても八年後とかになっちゃうな。