よろしくどうぞ。
ここ数巻、テンポのいい展開が続いていたので、もしかしたら
「ワーテルローが一冊で終わってしまうのではないか」などと思っていたが、
さすがにナポレオン最後の戦いは、端折ったりせずしっかり描かれるようで安心した。
先に結論を言うと、スゲー面白くて嬉しい。
作画はさすがに北斗の拳ライクだった初期に比べるとだいぶ力が抜けてはきているけど、
まだまだ長谷川哲也健在! という印象がある。頼もしや。
■リニーの戦いとカトル・ブラ
そんなに沢山関連書籍を読んだワケではないんだけど、ナポレオン関係の本では、
「ワーテルローはアレやってれば全然違う展開になってた」は良く見る記述で、
それくらい、偶然とか怠慢とか誤認が入り組んでワケ分からん戦役なんだよな。
だから、ナポレオンの勝利も全くありえない話ではなかったのだろう。
(大局的にはどこかで破滅するのは歴史の必然だったとは思うけども)
逆に言えば「これでもかとハズレ選択肢を選び続けた」ということでもある。
こういうの、テキストで読むと「なんでそうなるん?」って首を傾げることはある。
(俺の読解力が低いせいなんだけど)
そうした疑問に、マンガでしっかり応えてもらえる快感があった。
バカなんで絵にしてもらなわないと分かんないんです俺。
勿論、あとがきで書かれている通り、諸説あるうちから面白い展開を
恣意的にチョイスしているはずなので、ヘタに「史実に忠実!」とか
思い込むのも違うだろうけど。
タンボラ火山の噴火が影響するのは、なんというかナポレオンが
「世界の大きな流れ」みたいなものに歯向かっている立場という印象が出て素敵だ。
■スルトとネイとグルーシー
「実戦指揮官向きのスルトに参謀は無謀だった」、
「ネイはカトル・ブラ手前で終始モタモタした挙げ句最悪のタイミングで暴走した」
「グルーシー帰ってこい」の敗因三本立ては有名な話なんだけど、実際のところ
こんな単純化した理由が本質なのかは良く分からない。
スルトについては、ナポレオン本人の評価では、参謀として優秀だったというらしいし。
ネイがモタモタしてた理由は、シェルショックやらサボタージュ、飲酒説等、
本当に諸説あるらしくよく分からない。
グルーシはまあ……シンプルに器じゃなかったという話なんだろうけど。
で、本作なんですが。
まず、スルトなんだけど、23巻でギャグキャラみたいになっててちょっと悲しかったので
24巻だと比較的シリアスで嬉しかったな。
スルトはシンプルにイケメンなうえに、厳格な軍人だったり天才への憧れだったり、
パン屋だったり悪しき略奪者だったり王座への妄執だったり保身だったり、
視点人物としての動きが多くて妙に人間臭いので、やはり彼がバタバタしてると面白い。
ナポレオンに対して「器が違う」と理解するシーンはとても良かった。
一方で、参謀職に苦しんでいる姿も描かれるが、スルトの向き不向き以前に、
「ベルティエの代わりがこなせる人間果たしているのか?」という気もする。
ダヴーやスーシェが居たら? というifはどうしたって考えてしまうが……。
スルト以上に問題児であるネイについては、そもそも能力が限定的というか、
ロシア遠征みたいな「逆境かつシンプルな状況」以外では力が発揮出来ないうえに、
国王への裏切りでメンタルがボロボロ……という説明付けがされていて納得感がある。
今更気付いたけど、マッセナの「アーサー・ウェルズリーには勝てねえ」は伏線だったのか。
前二者にくらべ、グルーシーは本当にシンプルに「元帥はムリだった」という感じで切ない。
でも年功序列で事業部長とかに祭り上げられて半年もしないでブッ潰れる人、
会社とかでもいるからなあ。人間にはどこまでも限界がある。
とはいえそれは重い役割を与えられるまで分からないことだ。
組織に余裕があるうちに無理させておく必要があるんだろうな。簡単なこっちゃないが。
■敗因の積み重ね
そういえば地味にジェロームはここでポカかましてるんだよな。
陽動のつもりがガチになっちゃうという秀忠のようなパターン。
ロシア遠征のミスを挽回しようとして泥沼、というのは分かりやすいロジックである。
ジェロームに限らず、ナポレオンの兄弟達って「無能」と切り捨てるには
ちょっと可哀想な人たちという印象がある。
ジョセフもリュシアンも要所で光るとこ見せてる気がするし。
まあ一番大事な場面で役立たずだからやっぱダメか。
「元帥杖は全ての兵士の背嚢に入っている」という昔ポジティブに描かれたセリフが
完全に悲劇として強調されているの、底意地悪くて好き。
でも久しぶりに「大陸軍は地上最強ォォォ」が見れて嬉しかったな。
そして、昔から何度も作中繰り返されてきた、ナポレオンの
「お前たちは考えるな」と「考えて行動するんだ」の対比がここにきて結実する。
ずっと対比されてはいたものの、直接ナポレオンが「思考停止させてしまったこと」に
言及するとは思ってなかった。タレーランの言う「依存」にも通じるんだろう。
それから、ここにきてジェラール将軍にフォーカスが当たる。
この人ってスーシェと並べてセント・ヘレナのナポレオンから「第一級」と
評価されてるんだよな。どういう意味合いで言われてるのかは良く分からない。
ジェラール将軍、軽く調べたくらいでは事績が追えないレベルの知名度であるが、
英語版ウィキペディアを見たら「アウステルリッツ、イエナ、ヴァグラム、
ロシア遠征で戦果を残している」ってあって、すげえ重要ポジじゃんか。
なんでこんなエピソード少ないんだろう。
あとルカ・ビクトルのアホコンビが今回はちゃんと出てきてくれてホッとした。
相変わらず緊張感ないやりとりで張り詰めた展開にメリハリをつけてくれる。
まあそれにしたって「コイツら死の恐怖ゼロだな」という気もするが、今更か。
ビクトルはエジプトのころからこうだったし。
というわけで、24巻は「ワーテルローの戦い・序」という感じであった。
非常に面白かったが、このじっくり具合だと、あと単行本二冊分くらい
ワーテルローが続きそうな気がする。
思ったより長く楽しめそう、という嬉しさと同時に、長谷川先生の健康とかは
大丈夫かなあとなんとなく心配もしてしまう。大きなお世話ではあるが。
アシスタントの方が亡くなったりしてるからなあ……。
さて、果たして、このマンガのラストはどこになるかなあ。
セント・ヘレナまで描き切るのかしら。楽しみだ。
ネイやミュラの最後とか、フーシェの最後とか描かれるのかな?
タレーランがラストシーンを飾ったりしないかな。
ナポレオンの死を「事件ではなくニュースです」って切り落とすあのシーン。
いや、アレで終わるのも変か。
とにかく次の巻も楽しみだな!
半年後になるかな。
「ワーテルローが一冊で終わってしまうのではないか」などと思っていたが、
さすがにナポレオン最後の戦いは、端折ったりせずしっかり描かれるようで安心した。
先に結論を言うと、スゲー面白くて嬉しい。
作画はさすがに北斗の拳ライクだった初期に比べるとだいぶ力が抜けてはきているけど、
まだまだ長谷川哲也健在! という印象がある。頼もしや。
■リニーの戦いとカトル・ブラ
そんなに沢山関連書籍を読んだワケではないんだけど、ナポレオン関係の本では、
「ワーテルローはアレやってれば全然違う展開になってた」は良く見る記述で、
それくらい、偶然とか怠慢とか誤認が入り組んでワケ分からん戦役なんだよな。
だから、ナポレオンの勝利も全くありえない話ではなかったのだろう。
(大局的にはどこかで破滅するのは歴史の必然だったとは思うけども)
逆に言えば「これでもかとハズレ選択肢を選び続けた」ということでもある。
こういうの、テキストで読むと「なんでそうなるん?」って首を傾げることはある。
(俺の読解力が低いせいなんだけど)
そうした疑問に、マンガでしっかり応えてもらえる快感があった。
バカなんで絵にしてもらなわないと分かんないんです俺。
勿論、あとがきで書かれている通り、諸説あるうちから面白い展開を
恣意的にチョイスしているはずなので、ヘタに「史実に忠実!」とか
思い込むのも違うだろうけど。
タンボラ火山の噴火が影響するのは、なんというかナポレオンが
「世界の大きな流れ」みたいなものに歯向かっている立場という印象が出て素敵だ。
■スルトとネイとグルーシー
「実戦指揮官向きのスルトに参謀は無謀だった」、
「ネイはカトル・ブラ手前で終始モタモタした挙げ句最悪のタイミングで暴走した」
「グルーシー帰ってこい」の敗因三本立ては有名な話なんだけど、実際のところ
こんな単純化した理由が本質なのかは良く分からない。
スルトについては、ナポレオン本人の評価では、参謀として優秀だったというらしいし。
ネイがモタモタしてた理由は、シェルショックやらサボタージュ、飲酒説等、
本当に諸説あるらしくよく分からない。
グルーシはまあ……シンプルに器じゃなかったという話なんだろうけど。
で、本作なんですが。
まず、スルトなんだけど、23巻でギャグキャラみたいになっててちょっと悲しかったので
24巻だと比較的シリアスで嬉しかったな。
スルトはシンプルにイケメンなうえに、厳格な軍人だったり天才への憧れだったり、
パン屋だったり悪しき略奪者だったり王座への妄執だったり保身だったり、
視点人物としての動きが多くて妙に人間臭いので、やはり彼がバタバタしてると面白い。
ナポレオンに対して「器が違う」と理解するシーンはとても良かった。
一方で、参謀職に苦しんでいる姿も描かれるが、スルトの向き不向き以前に、
「ベルティエの代わりがこなせる人間果たしているのか?」という気もする。
ダヴーやスーシェが居たら? というifはどうしたって考えてしまうが……。
スルト以上に問題児であるネイについては、そもそも能力が限定的というか、
ロシア遠征みたいな「逆境かつシンプルな状況」以外では力が発揮出来ないうえに、
国王への裏切りでメンタルがボロボロ……という説明付けがされていて納得感がある。
今更気付いたけど、マッセナの「アーサー・ウェルズリーには勝てねえ」は伏線だったのか。
前二者にくらべ、グルーシーは本当にシンプルに「元帥はムリだった」という感じで切ない。
でも年功序列で事業部長とかに祭り上げられて半年もしないでブッ潰れる人、
会社とかでもいるからなあ。人間にはどこまでも限界がある。
とはいえそれは重い役割を与えられるまで分からないことだ。
組織に余裕があるうちに無理させておく必要があるんだろうな。簡単なこっちゃないが。
■敗因の積み重ね
そういえば地味にジェロームはここでポカかましてるんだよな。
陽動のつもりがガチになっちゃうという秀忠のようなパターン。
ロシア遠征のミスを挽回しようとして泥沼、というのは分かりやすいロジックである。
ジェロームに限らず、ナポレオンの兄弟達って「無能」と切り捨てるには
ちょっと可哀想な人たちという印象がある。
ジョセフもリュシアンも要所で光るとこ見せてる気がするし。
まあ一番大事な場面で役立たずだからやっぱダメか。
「元帥杖は全ての兵士の背嚢に入っている」という昔ポジティブに描かれたセリフが
完全に悲劇として強調されているの、底意地悪くて好き。
でも久しぶりに「大陸軍は地上最強ォォォ」が見れて嬉しかったな。
そして、昔から何度も作中繰り返されてきた、ナポレオンの
「お前たちは考えるな」と「考えて行動するんだ」の対比がここにきて結実する。
ずっと対比されてはいたものの、直接ナポレオンが「思考停止させてしまったこと」に
言及するとは思ってなかった。タレーランの言う「依存」にも通じるんだろう。
それから、ここにきてジェラール将軍にフォーカスが当たる。
この人ってスーシェと並べてセント・ヘレナのナポレオンから「第一級」と
評価されてるんだよな。どういう意味合いで言われてるのかは良く分からない。
ジェラール将軍、軽く調べたくらいでは事績が追えないレベルの知名度であるが、
英語版ウィキペディアを見たら「アウステルリッツ、イエナ、ヴァグラム、
ロシア遠征で戦果を残している」ってあって、すげえ重要ポジじゃんか。
なんでこんなエピソード少ないんだろう。
あとルカ・ビクトルのアホコンビが今回はちゃんと出てきてくれてホッとした。
相変わらず緊張感ないやりとりで張り詰めた展開にメリハリをつけてくれる。
まあそれにしたって「コイツら死の恐怖ゼロだな」という気もするが、今更か。
ビクトルはエジプトのころからこうだったし。
というわけで、24巻は「ワーテルローの戦い・序」という感じであった。
非常に面白かったが、このじっくり具合だと、あと単行本二冊分くらい
ワーテルローが続きそうな気がする。
思ったより長く楽しめそう、という嬉しさと同時に、長谷川先生の健康とかは
大丈夫かなあとなんとなく心配もしてしまう。大きなお世話ではあるが。
アシスタントの方が亡くなったりしてるからなあ……。
さて、果たして、このマンガのラストはどこになるかなあ。
セント・ヘレナまで描き切るのかしら。楽しみだ。
ネイやミュラの最後とか、フーシェの最後とか描かれるのかな?
タレーランがラストシーンを飾ったりしないかな。
ナポレオンの死を「事件ではなくニュースです」って切り落とすあのシーン。
いや、アレで終わるのも変か。
とにかく次の巻も楽しみだな!
半年後になるかな。