
アマプラで見たので、久しぶりに映画の感想を箇条書き的に書いてみます。
よろしくどうぞ。
2022年公開、平野啓一郎による日本の長編小説の映画化。
私は原作未読ですが、映画とは結構違うらしくそっちはそっちでちょっと興味深いな。
あと石川慶監督作品も初見です。
「不慮の事故で命を落とした夫は全くの別人だった。
それを知った妻は、知り合いの弁護士に、夫の正体を探るように依頼する」
という、ジャンルとしてはサスペンスミステリ……になるのかな?
「家族だと思ってた人が全くの別人」と言われると、個人的には
黒沢清のクリーピーを思い出すが、全然まったく共通点は無いです。
映画始まって、大祐が里枝と出会って家庭を築き死ぬまでを30分くらいで
スピーディにやるんだけど、短い時間でちゃんと説得力を持たせる感じが良かったな。
ブレーカー入れてくれるとことか、絵を見せるシーンとか。
ブレーカー入れてくれるとことか、絵を見せるシーンとか。
このあたりはもう安藤サクラの演技パワーが炸裂してた感じ。
冒頭、文房具に触れながら泣いてるシーンだけで伝わってくる「薄幸」感が絶品である。
「あれ、泣いてる、どうしたんだろう」って一瞬で引き込まれた。すごい。
「冴えない店員のおばさん」でありつつも、名前を書くときのちょっと胸元見えそうな
微妙な色気の醸し方とか素晴らしい。
あと全体的に、子役の演技がかなり自然ですげえなと思った。
子役への仕込みで監督の技量が見えるみたいなとこあるよなー。
もうなんか「ガチガチに台本読んでるな!」って映画も相当多いからね。
もうなんか「ガチガチに台本読んでるな!」って映画も相当多いからね。
映画開始から結構経って満を持して登場するのが弁護士城戸なんですが、
妻夫木さんは「裡に何かを秘めた軽薄なイケメン」をやらせると本当にビシッとハマるよな。
妻夫木さんは「裡に何かを秘めた軽薄なイケメン」をやらせると本当にビシッとハマるよな。
イヤなこと言われたときに「……ニコッ」と苦笑で誤魔化す感じが絶妙。
窪田正孝のあのモゴモゴしててコミュニケーション能力が無さそうだけど
悪いやつじゃない感というかほっとけない感がとても良かった。
そしてボクサーであることに違和感がまったくない肉体の凄さよ。
地味にボクシングシーンもちゃんと迫力と説得力があった。
地味にボクシングシーンもちゃんと迫力と説得力があった。
それから真木よう子の、安藤サクラと対照的な「鼻持ちならなさ」も良かったな。
なんつーか、このクラスの男が落とすに相応しい美女、という感じがちゃんと出てる。
「元のあなたに戻って」というセリフのなんもわかってない「隔絶」感が素晴らしい。
義両親との食事シーン、貴族じみた雰囲気で実に感じ悪くて最高だった。
義両親との食事シーン、貴族じみた雰囲気で実に感じ悪くて最高だった。
真木よう子自体はとても好きな女優(映画「ゆれる」の演技とかも好きだった)なので、
最近プライベートで騒動起こしてるのはちょっと悲しいものがありますね……。
あと脇役にも名優がゴロゴロ出てくるのも贅沢で素晴らしい。
モロ師岡・きたろう・でんでんあたりはもう当然のように演技だけで必要な情報を
客にしっかり伝える素晴らしい職人ぶり。柄本明もわかりやすーく怪演してて良かったなあ。
モロ師岡・きたろう・でんでんあたりはもう当然のように演技だけで必要な情報を
客にしっかり伝える素晴らしい職人ぶり。柄本明もわかりやすーく怪演してて良かったなあ。
「300年生きている男」のくだりは戸籍によってそういうことも成立するよって話なのかな。
あとカトウシンスケ演じる柳沢の「いいヤツ」感がたまらなかったな。
「死因が自殺で無い」と知ったときの反応で泣きそうになっちゃったよ。
河合優実もなんか、回想シーンに出てくるのに相応しい昭和顔でとても良い。
下着のシーン、胸大きいな! と素朴に思いました。
それと眞島秀和演じる旅館の長男とか、モロ師岡演じる義父とかの
「悪気無いからこそのタチの悪さ」みたいな表現が素晴らしい。
ああいう「コレは差別じゃなくてね」みたいな感じで差別意識放り込む老人いるんだよなー。
名優で固められたなか、小籔さんは最初ちょっと浮いてるかなあって思ったんですが、
全体のトーンがあまりに暗いので、この人が清涼剤になってくれてだいぶ助かった。
コメディリリーフとまではいかないまでも、唯一深刻でない顔をしている第三者で、
小藪さんおらんかったら相当見ててしんどい映画だったような気がする。
コメディリリーフとまではいかないまでも、唯一深刻でない顔をしている第三者で、
小藪さんおらんかったら相当見ててしんどい映画だったような気がする。
最初は里枝に感情移入して、彼女の物語として見ているとそこからボクサー編になって、
そっちに感情を持っていかれたと思ってたら後半は城戸の物語として収斂していく。
そっちに感情を持っていかれたと思ってたら後半は城戸の物語として収斂していく。
そして振り回されながら「この話どこに着地すんだろ」って思いながら見てたら
ラストシークエンスで「そこかよ!」と唸ってしまった。オチとしては切れ味抜群だと思う。
明らかに差別や排他がテーマになってるわけで、「浮いてる」とまでは感じなかったけど
ニュースでヘイトスピーチが流れる場面はちょっと直接的過ぎて鼻白んだところはある。
ただ、覚悟がないと出来ない描写とも言えるし、肚決めて入れたシークエンスなんだろうな。
実際身の回りでも平気でヘイトかます人増えたしなあ……おおヤダヤダ。
ただ、覚悟がないと出来ない描写とも言えるし、肚決めて入れたシークエンスなんだろうな。
実際身の回りでも平気でヘイトかます人増えたしなあ……おおヤダヤダ。
「戸籍ってそんな簡単に交換出来んの?」という感じもするし、
「死刑囚の息子と戸籍交換する奴なんなん?」とも思うのだが、
おそらくその辺は映画化の際にガツッと削った要素なんじゃなかろうか。
原作未読なのに「その取捨選択、映画としては正しかったんじゃないか」と
勝手に想像している。間違ってたらすいません。
勝手に想像している。間違ってたらすいません。
日曜日の午後に何気なく見たわけですが、非常に満足度の高いいいミステリ映画でした。
120分を全然長く感じなかったので、とても良い作品だったんじゃないでしょうか。