1
俺は基本的に「スピンオフ作品」をあまり手に取らない。

特に、作者が別だと「どういうスタンスで読んでいいのか分からない」という戸惑いがある。
二次創作ではないが二次創作的なものというか……なんか据わりが悪く感じる。

そして、好きな作品であるとその傾向は一層強まる。
なんというか「本編への雑味になる」という感覚が俺の中に生じるのだ。
だからバキのスピンオフは全く読めてない。
(※2025/11/30追記:五年前にほぼ同じようなこと書いてましたね……)

そんなわけで「ハンチョウ」もずっと読んでなかったんだが、
あるとき実家に帰ったら兄貴が買っていて、読んだら全然楽しく読めたので
もう自分でも買っちまうかと2025年5月くらいに一気に購入した。

ハンチョウが楽しく読めるというのは、とりもなおさず
俺の中で、カイジ本編への思い入れが完全に無くなったということだろう。

正直なところ、高校生のころに熱烈に読んでたのは橋渡りとEカードまでで、
沼編以降はさほど真剣に読んでなかったりする。
「天」「アカギ」「銀と金」「(新じゃないほうの)黒沢」あたりに比べて、
カイジは微妙に思い入れが薄いのかも知れない。

また、「ハンチョウ」は娯楽性の構造がほとんどカイジに依拠してないため、
「完全に別作品」と割り切って認識出来ているのかも知れない。

なんか前置きが長くなりましたが、とにかく1~20巻ぶっ続けで読んだので、
気に入ったエピソードについて触れていこうと思います。
周回遅れも甚だしいが、よろしくお願いします。
1
1巻、ガラケーが出てきて「ああ……そんな歴史ある作品なんだな」と驚いてしまった。

といっても2017年の作品なので、たかだか八年前である。
あれ? 八年前ってまだガラケーがある時代だったっけ?
一般的にはスマホが普及してるけど、仕事用端末はガラケーが残ってるくらいかな?
このあたりもう感覚がだいぶ怪しくなっている。

俺はガラケーからスマホに切り替えるのメチャクチャ遅かったんだけど、
そんな俺でも今のスマホは二台目か三台目だし……。
2
風邪回のこの「風邪気味だった体を過剰なまでのヒーリング対応で完全回復!」って感じ、
なんか得も言われぬ高揚感というか、気持ちよさがあるな……。

しかし、マンガで「風邪の引き始めからの回復」の喜びを共感させた作品って
今までになかったと思うので、改めてスゲー作品だなという驚きがある。

これ以降も本作は「あるあるネタ」と切り捨てるにはあまりに細かく、
これまでの作品では拾い上げなかったニュアンスの間のニュアンスまでも拾っていく。
3
反面、海ではしゃぐイベントは全く共感出来なかったぜ。
これは作品がどうこうじゃなく、俺が友達と海で遊んだ経験がないから。
本当に冗談抜きに一回もないと思う。大学時代、夜の海にドライブしたことは
あったような気がするが、当然泳いだりはしてないし。

もちろん「共感できないからつまらない」ということではなく、
「なるほどそういうもんなんだ」という「理解」の面白さがある。

汗かいて小腹すいたタイミングでカップうどんが染みる、というのは
きっとそうなんだろうなあと。
4
「狭いパン屋は美味い」もメチャクチャ共感してしまった。

というか、基本焼き立てパン屋さんって美味いもんなんだけど、
「あれ、イマイチだな」って思ったときは妙に広かったりした気がする。
俺の観測範囲がメチャクチャ狭いので、偶然かも知れない。
5
1DAYコンタクトは、ネタとして面白いのはわかるんだけど、
「え、じゃあ大槻、地下の仕事中ずっとコンタクトで仕事してるの?」というのが
妙に引っかかってしまった。メガネで良くない?

俺は「工事現場での仕事」と「コンタクトの扱い」両方にある程度知見があるので、
あんな劣悪な環境の工事現場でコンタクトで仕事するの大変じゃない? と思う。
目にゴミ入ることが頻繁にありそうだし、地面に落としたらもう拾えないし。
no title
というか、この地下労働施設の設定、今思うと相当素っ頓狂というか、
タコ部屋的な地獄にしても「地下」ってすげえよなって思う。
地下にまでちゃんと電気水道通ってるし、微妙にユルい割に秩序も保たれてる。

現実にこの手の施設だったら、同性愛の強要とかもっともっと刑務所的な
地獄になっていきそうなもんだけど、さすがにそこまで凄惨ではない。
しかし、頻繁に外出する班長達を除けば、何十年も地の底で生活する地獄なんだよな……。

カイジの時点でも歪な設定だったけど、本作ではより一層地下を牧歌的にすることで
好感など持ち得ない極悪人であるはずの大槻を、感情移入しやすい面白中年に仕立てている。

この「大槻を善人にしすぎない」バランス感覚が絶妙だと思う。
「笑えるクズ」の範囲ギリギリ……ちょっと逸脱するくらいのラインにおいている。
1
牡蠣回も好きだなー!
生食べるかの葛藤もそうだけど、純粋に美味そう。

俺はノロ当たったことないんだけど、「絶対になりたくない」という気持ちが強くて、
生牡蠣は何年も食べてなかったりする。
でも焼き牡蠣でもクオリティ高いとこだとプリップリだったりするから
「生が食べたい」ってなることはあんまりねえかもなあ。

あとオイスターバー行ったことないんだけど、牡蠣ばっかで飽きないのかな?
牡蠣好きだけど、そんなたくさん食べたいという気持ちがない。
2
喧騒から離れて田舎を散歩するのも好きな回。
何も起きてないのになんかスゲーいいんだよな。
冬の喫茶店でピザトースト食べて寝落ちするシーンのあの気持ちよさそう感!

爽やかなエピソード風でいて、大槻が思い出す「地下のみんなの顔」が
チンチロで搾り取ったときの泣き顔という悪趣味なオチも素晴らしい。
借金で地獄に落ちてきた人間から、更に血をすする蛭のような男であることを
思い出させてくれる。
3
寝しなに半覚醒状態で夢を見て「ワケの分からんことを考えてた」というエピソード、
これもメチャクチャ共感出来てすげえな~。
コレみんなあるやつなんだ! って嬉しくなった。

そして寝る直前で騒音に起こされたときのムカつきも死ぬほど共感出来る。
こういうときムカついてアドレナリン出ちゃうから二度寝できねえんだよな。
しかしこういう細かすぎる状況をマンガとして落とし込むのスゲーよな。

ただこの話のオチのとこで「半身浴したら余計目が覚めちゃわない?」とか
「耳栓すると寝られないんだよな」とか、俺固有の事情がノイズになったりもした。
俺が変に神経質なだけかそれは。
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疎遠になった友達の話、なんかこう……かなりキツい気持ちになるな。

小学校から大学にかけて出来た「友達」、大半が疎遠になったというか、
正直疎遠にならなかったの一人くらいしかいないので……。

割とハッキリと「縁切り」をされたこともあるし、疎遠になった元友人に
連絡を取ってみて素気なくされたり、悲しい思い出がいくつもある。
俺の不義理が原因とはいえ、切ない。

これまでの人生で「疎遠になった人と再会して再び仲良くなる」という経験が
一度もない
んだよな。どっかで起きることがあるだろうか。
123
黒崎様、どういうキャラなんだ……? という感じもあるが、
まあ本編でも相当キャラがブレてるからどうでもいいのかも知れない。

このエピソードは5巻収録なんだけど、このあたりはタイムリープにテロリストにと
「これまでと違う展開」を模索し始めた感じがある。

トリッキーな構成とかオチとか、クオリティ自体は高くてスゲーなって思うんだけど、
この手の飛び道具的エピソードを「ハンチョウ」にあんま望んでないなー、とも思った。
1
マンガ話の回とかは「マンガ好きのおじさん達の雑談」という感じで
大変居心地がいいエピソードでとても好きだな。俺も混ぜてほしいぜ。
つげ義春の話ができる知り合いがまったくいない。

他方、「綿の国星」は知らなかったので勉強になった。
俺のマンガ知識、少女漫画だけスッポリ抜けてるんだよな。
萩尾望都とかも読んだことなかったりする。

この辺の「灰になるまで……」オチの天丼は好みが分かれるかも知れないが
個人的にはあそこをパロディするの見たことなかったので新鮮で好き。
2
深夜のドカ食い回はシンプルに量が多すぎる。
デパ地下のやつとかもそうだけど、大槻たまに食べる量多すぎない?

俺は個人的に一食で「麺」と「米」と「パン」は一種類しか食べないので
焼きそばとおにぎりとバーガーという組み合わせは畏怖を感じるぜ。
でも会社にもいるけど、大食いの人って一食でそれらを組み合わせて食べるよなあ。

「ドカ食い気絶」、20代~30代前半くらいならまあいいけど、44歳の俺はもう
絶対に出来ないぜ。確実に寿命が縮んでしまう。
1
昼飲み回のこのコマ、すごく好き。

真っ昼間から日本酒のんでふわふわになってるのに、外では人々が
「平日昼間」の日常をやっているという違和感。

いや、酒飲んでなくても、平日に休みとって散歩してたりするとこの感覚ある。
不思議と「疎外感」とか「孤独感」ではない。「優越感」とも違う。
なんかわからんが、なんかとてもいい。好き。
1
早起きして行動し始めたときのこの「まだこんな時間!?」の昂揚感もいいなあ。

「あるあるネタ」というのは簡単だが、こういう細かな日常の喜びをすくい上げて
作品に落とし込むの簡単なことじゃねえと思うんだよな。
ちょっと違うけど16時くらいに飲み始めて、店を出たときの「まだ19時!?」感とかも好き。

この信州旅行編、後半メタ視線が入ってオチるんだけど、しっかり満足感高くて好き。
2
7巻から柳内さんとか牧田さんとか準レギュラーキャラが増え始めて話が広がり始める。
基本的に、ハンチョウの準レギュラーはみんないいキャラだし、増えてもメインは
いつもの四人なので安心して読める部分がある。
変なキャラが出ずっぱりになるといいことがないので、このバランス感覚は素晴らしい。

上野の科博、行ったことないけどいつか行ってみたいなと思うようになった。
ただいかんせん、俺の日常は上野に行く機会がなさすぎる。
行こうと思えばすぐ行けるんだけどな。東海道線で30分もかからず。
3
旧東海道歩き旅編、俺にとってあまりにもぶっ刺さる話で最高だった。

俺は東京で仕事をしているので日本橋やら神田は見たことある景色過ぎるし、
横浜~品川は徒歩で踏破したコースである。六郷橋なんか年30回くらい渡ってると思う。

「東京の街並み、歩くとガンガン変化していく」というあの感じだったり、
「銀座人多くてダリー」とか、「大田区景色が変わらない」とか、ガッツリ感情移入できたなー。
蒲田とかあのあたり、散歩しててもつまんねえんだよな

そしてラスト、歩ききった横浜での餃子とビールの多幸感・昂揚感たるや。

今の俺の体力だと東京スタート横浜ゴールはちょっと無理だろうなー。
大森あたりで力尽きる気がする。
2
大中華喰台祭、おもくそバキなのだがパロディのやり方が丁寧で品がある。
なんだろ、福本作品に対してもそうだけど、ひと捻りがあるんだよな。
パロディにはこだわりとリスペクトが要る。

そして盛り上げるだけ盛り上げてスパッとしたオチが見事で好き。
めんどくさくなって王将にするという大槻の行動にも説得力があって、
これしかないという落とし所だ。
1
唐突に差し挟まれる原作再現で笑ってしまった。

原作どんな感じだっけと思って調べてみたところ……。
3
原作の班長、だいぶ見た目違うな……。

こんな痩せてたっけ?
というか原作班長ホント愛嬌が無い。
1
どじょう鍋、「興味なくはない」くらいの枠にずっといるな……。
自分から食べに行くほどでもないけど、誰かに誘われたら行くかもってくらい。

味があんまイメージできなくて「美味しそう!」って感覚がない。
割り下だから甘めの味付けなんだろうか。肉類に比べてテンション上がらないが
食べたら食べたで「うめえ!」ってなるんだろうな……。

あ、あと食べてみたい感でいうと、この後に出てくるリコッタパンケーキ回も良かったな。
パンケーキなんて長らく食べてない。
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10巻でコロナエピソードが出てきて「ああ、この頃か~」ってなった。
喉元すぎればというか、2025年の今からするとすっかり昔話じみた記憶である。
いうてまだ3年ちょいとかしか経ってないんだよな。

あのコロナ期のピリピリした感じ、思い出すとイヤだなあ。
最初の一ヶ月くらいは非日常を楽しんでた感があったが、それから数年ずっと
ダリー日々だった。友人知人がこの時期に結婚出産してる人が多くて、
大変そうだったのが印象深い。

ちなみに俺は2025年7月に人生初コロナになりました。
コロナ期にかからなかったくせに今更なるのかよ。


えー、本当は1~20巻まとめて感想を書くつもりでしたが、長くなったので10巻で区切ります。
ご清聴有難うございました。